カテゴリー別アーカイブ: 中日春秋

方針転換・・漢語

「 方針転換」 漢語
旧日本軍は、部隊が敗走するのを「転進」と呼んで、
惨敗の印象を取り繕っている。
「一般社会の慣行と違う監護を・・強要した」。
作家の丸谷才一さんが「轟沈」などとともに「軍人漢語」と呼んで批判した言葉だ
的外れな心配であるのを願っているが、
最近、似たような語感があった気がする。
新型コロナウイルス感染症の患者の入院要件について、
政府が明らかにした厳格化の方針である。
感染急増の地域で、入院対象は、
重症者や重症化リスクの高い患者らに限るという。
菅首相は「方針転換した」と説明したそうだ。
「方針転換」が「医療崩壊」の始まりを意味しているのでなければいいが、
中等症ではあっても症状は厳しい。
急に悪化する怖さがる感染症でもある。
自宅で療養する患者も医療関係者も、不安は大きいはずだ。
深刻な事態ではないだろうか
感染の急拡大について、デルタ株が手ごわいのだと説明しているそうだ。
ただそれは国内外の専門家らが以前から指摘していたことでもある。
「私たちに欠けているのは、知らないものについての知識のことなのではなく、
知っているものを深く考える能力である」
仏社会学者、エドガー・モラン氏の言葉という「科学の言葉」
知ってる「手ごわさ」より不確かな楽観論を見てきたための事態に思える。
惨敗でなければいいが、心配な「転換」である
              ※引用元 中日新聞(中日春秋)より

「旗を掲げる」とか「旗印にする」。

この場合の「旗」には理念や理想、方針という意味があつのだろう

東京五輪の開会式で、新たな「旗」が掲げられた。

これまでは1人だった旗手を男女1人ずつの計2人で行うことにした。

長い五輪の歴史の中でも初めてのことである

過去の大会でも女子選手が旗手になるケースはあったとはいえ、大半が男子選手。

国際オリンピック委員会(IOC)は昨年3月、男女平等の観点からこれを見直そうと

参加国対し男女1人ずつの旗手を選ぶよう奨励していた

当日の入場行進を見れば、大半の国その要請を受け入れ、男女で旗を掲げている。

身長差のある男女が旗ざおを握ってともに歩くのは難儀なようで相手を引っ張ったり、

引っ張られたりというシーンもあったが、これはこれで微笑ましい

旗ざおを男子握り、旗の端を女子が持つというスマートな国もあった。

なるほどこれなら歩きやすい。

日本は交代制でレスリングの須崎優衣選手とバスケットの八村塁選手が交互に旗を運んでいた。

身長も歩調も異なる男女がどうすれば平等にそして円滑に旗を運べるかと知恵を絞る。

平等な社会に向けた手本となる態度だろう

男子が1人で旗手を務める国もあった。

歴史は簡単には変わらないが、続ければ、男女の旗手が普通になっていくはずだ。

その旗を巻いて逃げてはなるまい。

                 ※引用元 中日新聞 中日春秋より

 

ラグビー精神

繰り返し聞いてきた言葉であったけれど、

一昨年日本で開かれたラグビーのワールドカップで、

心動かされるプレーの数々を見るたび、この言葉が実感を持って重なった。

「一人はみんなのために、みんなは一人のために」

もとは西洋に古くからある言い回しのようだ。

どうゆうわけか、ラグビー精神と関連づけた用い方は海外では少ないという。

日本には「みんなのために」の精神を人生そのものに重ねたラガーがいたようである

ワールドカップでも大活躍した福岡堅樹選手。日曜日の試合で、現役を退いた。

医師を目指し順天堂大医学部で勉学に専念する

大きなけがを負った高校時代、出会った医師に影響を受けた。

人に寄り添う姿に将来を重ねるようになったそうだ。

内科医だった祖父、歯科医師の父の存在も医の道に進む力になった

28歳で今なお実力は一線級である。

所属するパナソニックがトップリーグ優勝を決めた最後の試合でも、速く、強く、

チームのみんなに頼りにされていた。

決めたトライの見事なこと。

7人制の日本代表として、東京五輪に出る能力が十分にあるなかでの引退だ

コロナ禍で、医療関係の人々の仕事の重みを強く感じた。

「自分も人に必要にされる存在になりたい」と語っている。

競技生活や五輪への未練はないそうだ。

楕円球に代わり、患者の思いを抱えて進む新たな道である

                           ※引用元 中日春秋より  

世界自然遺産

昔むかしのカラスは漆黒ではなかった。

染物屋のフクロウに誤って染められて・・

各地で、形を変えて語り継がれてきた昔話のひとつ「フクロウの紺屋」である

似たような話が、奄美大島でも伝わるが、カラスの相手が違っている。

リュウキュウアカショウビンという

【奄美諸島の昔話」にある話によれば、奄美で繁殖するその鳥は、

カラスの赤と白の着物を奪った。

現在の美しい彩りを得ることになったいわれらしい

ほかにも、奄美や沖縄の昔話には、本土の昔話の動物が彩りの異なる

別の種に変わっている例がある

助けた動物が恩に報いる「報恩譚」には、「ハブの恩返し」というのもあるそうだ

独自性と豊かな多様性が、「昔むかし」の中にも、息づいている地域だろう

その独自性と多様性の自然が、ようやく世界自然遺産に登録される。

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が、登録を認める勧告をした

アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコ・・

人とともに島に生きる動物の多くが希少だ。

観光客が増えるのかもしれないが、登録は独自の自然を守り、

後世に伝えるための合図であろう

「ほこらさやいつよりまさり」うれしさはいつに勝ろう。

奄美の島唄の一節は、地元の心境か。

この先に生かしてほしい喜びだ。

            ※引用元 中日春秋より

キュリー夫妻

キュリー夫妻が苦労の末に発見した元素ラジウムの製造法について特許を

申請しなかった話は有名だが、簡単な決断ではなかったようだ。

夫のピエール・キュリーには迷いもあった

伝記の中にはこんな場面がある。特許取得をほのめかす夫に、

夫人は「科学者の精神に反する」と反対する。夫はなおも食い下がる。

「生活が厳しい。娘もいる。よい研究施設も造れる」

キュリー夫妻の「口論」が再び、今起きているようだ。

新型コロナウイルスのワクチン製造の特許権保護をめぐって、

世界の意見が分かれている。米国のバイデン大統領が

特許権停止を支持すると表明し、これにフランスなどが賛同する一方で、

開発拠点を抱えるドイツなどが反対する

特許権を緩和し、製造技術を広めれば、ワクチン不足に困る途上国は助かる。

米国などはキュリー夫人の立場なのだろう

心情的にはこちらに軍配を上げたくなるが、巨額の開発費を投じた

「秘伝」を守りたい製薬会社を一方的に叱るわけにもいくまい。

富というニンジンが奪われれば今後、ワクチンを開発する企業はなくなるという

主張もある程度は分かる

難しい問題である。特許を求めなかったキュリー夫妻のその後のくらしは

決して楽ではなかったそうだ。

賛成反対の双方の言い分を調和させる方法をを早急に探りたい。

議論ばかりでワクチン供給が遅れては元も子もない。

                        ※引用元 中日春秋より

 

忘れられた宇宙飛行士

人類で初めて月に降り立ったのは「小さな一歩」のアポロ11号、

アームストロング船長である。続いて、オルドリン飛行士が歩いた。

二人が月面で活動していたその時、ひとり司令船で

月の周回軌道にいた人物は、印象が薄い。

「忘れられた宇宙飛行士」「歴史上最も孤独な男」「第三の男」と

語られるマイケル・コリンズさんだ

月の裏側に入ると、地球が見えない。

生まれ育った星と人々、そして仲間から、通信も含め、

切り離された時空を経験している

再び見えてきた地球は「青と白の宝石」だったそうだ

〈そこには国境などはなく、人類のちがいや、大都市と農村の区別もなかった〉と述べている

〈一面とてもこわれやすそうに見えた〉とも。月面に足跡を残す栄誉にあずかった同僚らよりも、

神秘に触れ、思索に浸ることができた人だったかもしれない

コリンズさんが九十歳で亡くなった。地球帰還後、公職も務めているが、

メディアのインタビューなどにはあまり応じていなかったという。

「忘れられた」といわれる理由の一つであろう

世の政治指導者たちが同じように地球を見ることができればいいのに。

そうすれば「劇的に考えが変わるはずだ」とも語っている

母なる星を見た人はつい先日、「地球ほど美しく、こわれやすいものは多くない。

ともに守ろう」とネットで呼びかけたばかりでもあった

※引用元 中日春秋より

 

 

「ルーシアン」とは?

「ルーシアン」と読むのだろうか、手もとの英和辞典にはみつからない。

米国発のニュースで見かけた形容詞「Ruthian]である

米大リーグのベーブ・ルースから生まれた単語であるそうで

「ルースの」〈ルース流の」を意味するようだ

単語に名前が残るのは数々の記録を残す大打者にして

好投手でもあった偉大な選手ならではだろう

ルーシアンには「傑出した」「信じられないほどの」といった

意味合いや「投打二刀流」の含みもあるらしい

この形容詞とともに、エンゼルスの大谷翔平選手が語られていた

故障を乗り越えて、また一歩、リーグを象徴する選手に近づいたようだ

辞書を手に大谷選手をたたえる米メディアの記事を読みながら、

驚きと誇らしさを感じさせてもらった

月曜日の試合、本塁打リーグトップの選手として先発登板した

ルース以来百年ぶりという、打でも活躍し、勝利投手になっている

「ベーブ・ルース自伝」で記録をみると、

百年前のシーズンのルースは主に野手であった

登板は二試合とある、全力で「どちらも」の大谷選手を見ることができたなら、

ルースさんも驚こう

「三舟の才」という言葉がある。

和歌、漢詩、管弦の舟が仕立てられる中、どれに乗っても才能を発揮できる

王朝時代の貴人の挿話に基づく

走、攻、守、どれでもの「大谷流」にはこの先もある

※引用元 中日春秋より

 

スポーツの世界

「巨人、大鵬、卵焼き」の言葉が、横綱大鵬には少々不満だったという。

〈巨人なんかと一緒にされちゃ困る〉と思っていた。

大鵬の納屋幸喜さんが山際淳司さんに語っている

〈裸一貫でこの世界にとびこみ、まったく一人でやってきたんだ〉

他より豊富な資金のチームと自分の強さは異質だと。

同じにおいする選手がいたパ・リーグの南海に共感していたとも言っている。

脚光の下に集まるスターたちがいて、裸一貫からはい上がる無名たちがいる。

それぞれの物語が絡み合ってこそのスポーツの世界かもしれない。

先日、世界のサッカーファンを驚かせて、あっという間に頓挫した

欧州の新サッカーリーグ構想の”敗因”も、そのあたりに関係するか

豪華な構想であったスペイン、イングランド、イタリアから、

人気も実力も世界屈指の巨大クラブを12集めた構想だ。

米金融大手がこれまた驚くような額を出資すると報じられている

豪華なカードが増える半面、弱小やたたき上げの夢の躍進は難しくなった。

数多くのファンが反対の声を上げた。ジョンソン英首相が批判し、

欧州政界にも波紋が及んだ。構想から、雪崩を打ったような離脱が起きている

スター、たたき上げ、夢に挑戦するだけで終わるかもしれない存在。

それらがあってこその世界だと騒動は語っているようだ

                       ※引用元 春秋春秋より

つばめ(燕)

さまざまな鳥を表す漢字の中でも「燕」は少し特別だ、

多くは「鳥」や尾の短い鳥を意味する「隹」(フルトリ)が付くのに対し、

飛ぶ姿をかたどっているとされるのが「燕」という

中ほどの左右に伸びた部分が翼のようだ

下部の点が尾だと知れば「燕尾」が見えてくる

近所のクリーニング屋さんの軒先にあった古い巣から先日、

長いのと少し短いのと、きれいに伸びた燕尾がのぞいていた

いつの間にかつがいがいる、各地で夏日になったが、

毎年、初夏の訪れを告げるように、

列島の南から北へとツバメが戻る季節である

長谷川克著「ツバメのひみつ」によると、

成鳥になって1.6年ほどしか生きない

戻ってきたのが、昨年去っていったあの鳥とは限らないそうだ、

とはいえ、第4波といわれるコロナ禍で重い空気の土地に

“帰還”してくれたようで、いつもの年以上に、うれしく感じられる

東京などへの緊急事態宣言が近づき、

長い旅はさらに縁遠くなりそうな時である

東南アジアなどから、

長旅をしてきた鳥たちに何を見てきたのかと尋ねたくもなる

作物につく虫を食べ、そのかわりのように、

天敵が近づきにくい人家の軒先などをすみかにした

持ちつ持たれつのような関係を築いた特別な鳥であろう

つがいは古い巣を補修中らしい、間もなく始まる子育ての光景は

巣ごもりの人に限らず癒やしになりそうだ

                      ※引用元 中日春秋より

 

あいさつ

五輪の歴史の中で、もっとも有名な「あいさつ」かもしれない

1968年メキシコ大会、陸上競技男子200メートルの表彰台で、

金メダルのトミー・スミスと銅のジョン・カルロスの両黒人選手が、

母国米国の黒人差別に抗議するため、拳をあげた

「ブラックパワー・サリュート(あいさつ、敬礼)」と呼ばれる行動であった

 

2人は黒い手袋を付けて、国旗から目を背けている、

「黒人も人間である」と言う当然の主張を込めた行為であると、

日本では報じられているが、当時の国際オリンピック委員会、

ブランデージ会長は政治的主張に激怒した、母国でも批判がおきている

2人は選手村から追放された

 

あの「あいさつ」が、米国内で許容されることになった

米国オリンピック・パラリンピック委員会は、

東京五輪に向けた各競技の代表選考会に関して、

人種差別反対や社会正義を訴える平和的な抗議には、

制裁を科さないという指針を示した

国歌に起立せず膝をつくのも認めるそうだ

 

警察官の暴行を受けた黒人男性の死亡事件で、

「黒人の命も大切だ」の抗議運動が

盛り上がったのが、大きいという

許される行為の線引きなどで難しい問題が起きるかもしれないが、

歴史的な決定であろう

 

指針は半世紀以上経て、変わらぬ差別との闘いがあることも物語っている

「あいさつ」を見る目が変わったかも問われよう

                     ※引用元中日春秋より